「実況パワフルプロ野球」を制作したスタッフが、
数回に渡ってゲームのことや日常の開発生活について
お伝えしていく「パワプロ」制作者コラムです。


「ホームランくん担当が語る」
「守備・走塁担当が語る 1〜3」

「ペナント担当が語る 1」
今回はペナント担当者のコラムです。

パワプロ9(以下9)のペナントは、過去のシリーズからプレイしている方はお気づきかと思いますが、パワプロ8(以下8)のペナントの流れをくんでいます。
8のペナントでは大きな変化がありました。

「複数年プレイ」、「セ・パ(12球団)同時進行」です。

これまでのペナントでは、プレイヤーの操作する側のリーグしか参加していなかったのです。(つまり6球団。)

また、「せっかくシーズン中に選手を成長させても、1シーズンでは活躍させれない。」「続きがプレイしたい。」という要望も多くありました。

そこで「複数年プレイ」、「セ・パ(12球団)同時進行」を搭載しようとしたのですが大きな問題がありました。

「こんなに長いペナント、プレイするか?」

ということです。

「選手を成長させようと、1試合に何本もヒットを打っていると、必然的に1試合の時間が長引き、1シーズンがドンドン苦痛になる。」というジレンマも抱えていました。
こうなると複数年ペナントなど論外です。

そこで、「ペナントモードは1試合1試合、自分でプレイするのではなく、シミュレーションゲームのようにオートでサクサク試合が進むようにしてはどうか?」という意見があがりました。

ソコソコの賛成票を集めつつも、「いや、オレは1日1試合、自分でコツコツとプレイするスタイルだ!」というスタッフもいます。

また、「たとえオートでも、1試合1試合見るのは面倒!」「1シーズンの結果だけ見たい!」という意見も出る始末・・・。

そこで色々な意見を考慮して、
1.じっくりプレイしたい人向けの「通常試合」。
2.監督シミュレーション的に高速に試合を進める「高速試合」。
3.試合結果だけ見たい人向けの「スキップ」。
4.さらに、1シーズンをサクッとプレイしたい人向けの「日程早送り」。

以上、4つの試合進行モードを搭載することになったのです。

こうして、「複数年プレイ」、「セ・パ(12球団)同時進行」が実現可能となると様々なアイデアが生まれてきます。

「12球団同時プレイ」ということで、トレードもちゃんとできる。
「複数年プレイ」ということで、新戦力の導入も必要ということで、ドラフト、新外国人、FAの導入!
さらに記録も複数年を通算で記録したい!
歴代記録も塗り替えたい!・・・等など。

こうして膨れ上がった構想を元に、8のペナントが制作されたのですが、ご存知の通り、新外国人や歴代記録など、入りきらなかった要素が数多くありました。

また、いささかシミュレーション色が濃くなって、敷居が高くなってしまった感があり、どれだけ受け入れてもらえるか、心配なところでした。

8発売後でのアンケートはがき等の意見では、想像以上の方にペナントをプレイしていただいているようでした。

従来のペナントより、自由度が増したということで、皆さんがいろいろな遊び方を工夫されているようで驚きました。

もちろん、不満点や厳しい意見も寄せられました。

しかし、ありがたいことに、「次回作は、このように修正して!」とか「次はこの仕様を復活するべき!」など、多くの意見が次回作を求めて下さっているということです。

このような多数の生産的なご意見が寄せられる「パワプロ」は本当に幸せなゲームだと感じます。

9のペナントでは、前作で入りきらなかった仕様の追加や、不満だった箇所の修正はもちろん、新要素も数多く追加しています。

8当初の構想が、ようやく9でカタチになったという感じです。
もちろん、これで終わりではありません。

まだまだ、考えている新要素もありますし、皆さんのご意見もできるだけフィードバックしていこうと考えていますので、今後ともよろしくお願いします。

「ペナント担当が語る 2」
今回は、ゲーム制作者の知られざる生態を紹介しましょう。

ゲーム制作といった仕事柄、納期というものが存在し、自然と毎日が平均した仕事量ではなく納期が近づくにつれ、ウルトラハードな仕事量をこなさなければならなくなります。
この忙しい時期には、制作者の能力は極限まで高められた状態になっています。

1日の仕事時間が劇的に増え、必然的に睡眠時間が削られるので、それに耐えうる強靭なボディーに変貌しています。
このボディーは近場のコンビニ弁当や、ハンバーガー、コーラなどのジャンクフードで構成されています。

人によって、そのボディーは正常時より、太っていたり、痩せていたり、変色していたりしていますが気にしません。
(ちなみに、強靭といっても、長時間座っていたり、モニターを見つめたり、睡眠時間が短いといった状況に耐えれるという制作関係に特化した肉体であり、一般の運動能力は著しく低下しています。)

頭脳もかなり酷使されるため、いろいろな現象を体験できます。

有名なのが「降りてくる」現象。

ふとした時に、頭が冴え、思考は飛躍し、神がかり的な能力を発揮することがあります。

普段ならば1週間かかる仕事が、1日で完了してしまうという超人的な能力です。
(普段の能力がショボすぎるという説も・・・。)

この能力を自らの意思で発動できれば無敵なのですが、残念ながら、いつ「降りてくる」かは予測できません。

一説では夜中に、ヘッドフォンで音楽を聴きながら仕事をしていると「降りてきやすい」そうですが定かではありません。

ちなみに、私はこの制作中、1度も降りてきませんでした。
「降りてきて」いる制作者は目が据わっており、恐ろしいまでの集中力を発揮しているので話し掛けるのをはばかってしまいます。よってコミュニケーション×です。

さて、ピーク時にはこのように超人的な能力を有する制作者の肉体も、UP(アップ)を迎えた時点で、違った方向に変化していきます。

UPとは、いわゆる締め切りのことです。
UPまでの道のりが険しいので、無事UPを迎えられたときなどは制作者一同、狂喜乱舞します。

奇声を発する者、デスクに立ち上がり、両手を突き出して天を仰ぐ者・・・。

さすがに失禁した者はいないようでしたが(確認できず。)、それくらいの喜びようです。
「制作者でよかった〜」と思える数少ない場面です。

この瞬間以降、UP休暇(通称。忙しかった時期に休めなかった休日を取り戻す。)に向けて、主に書類整理等を行う日々に突入します。

この時期は皆、抑圧されていた日々の反動で、いろいろな行動を起こしています。

ヘアースタイル、カラーがガラリと変わる者、ゲームを買い漁る者、ネットワークゲームの世界へ旅立って帰ってこない者・・・。

UP休暇に入る前からこの浮かれっぷりですから、UP休暇を経て、会社に再び戻ってきた時のたるみ具合は、凄まじいものがあります。

ピーク時の超人的な能力は見る影もありません。

自分の作成したプログラムが解読不可能なのは勿論、キーボードの基本操作や、通勤経路、職場のフロアがどこだったかも怪しくなっているという状態で、しばらくはリハビリ生活が続きます。

一見、ただ単に堕落した人間に思われそうですが、休暇中に見聞を広め、心身ともにリフレッシュし、次回作に向けての英気を養ってきた姿なのです。
・・・とフォローしておきます。