TOYさん(小宮山っぽく決めてもらいました) TOYさんが語るパワプロヒストリー

  パワプロへの道、そして・・・

第2回「生中継68」(1999/7/15)
話題のパソコン「X68000」(以後、X68)用野球ゲームの制作を命じられ、
開発チームが編成されました。
私にとって2作目の野球ゲーム「生中継68」の制作がスタートしたのです。
ちなみにこの時のチームリーダーが、のちのパワプロでもずっといっしょに
やっていくこととなるAさんでした。

最初に決まっていたのは、リアル系キャラクターを使用すること、
プロ野球を強く意識した内容にすること、
X68のグラフィック機能を活かしたビジュアルにする、ということでした。

そこでまず私は「激ペナ」シリーズで採用されていた投打の高低要素に今一つ
納得していなかったので新たなシステムを模索することにしました。
当時、近鉄の野茂投手がフォークボールでバンバン三振を取っていたので何とかあれを
表現できないものかと考えていたのです。

まず、従来の野球ゲームの問題点を解決してゆくことにしました。
思考の過程は至極単純で明快なものでした。
まず、従来のピッチングの納得できない点は・・・。
ストレートと変化球という違いが明確になく、しかも、投げた後に
グニャグニャ曲げることができてしまう。
では、球を離す前にストレートか変化球を決めておくようにしよう。
次に、従来のバッティングの納得できない点は・・・。
なぜ打球がフライになったりゴロになったりするのか?
では、球がバットのどこに当たったか判るようにしよう。
さらにバットの芯というものを設定しよう。
ここで大方の方向性は決まりましたが、
次の問題は最大の問題でもある高さの表現方法でした。

従来にも高さの要素を取り入れた野球ゲームは存在しましたが、単にストライクゾーンを
9分割したモグラ叩きのようなゲームとか、ほとんど高さの判別がつかないゲーム性のもの
だけでした。
実のところ、投球された球とその真下に投影された影とを見れば高さは判別できるのですが、
(球技ゲームのほとんどはこれ)こちらの想定していた精密なバッティングの為には
無理がありました。
テストプログラムを作り実験を繰り返し、出た結論は・・・。

立体視ができない限り高さの判別は無理

でした。

ならば、投げ込まれるポイントを表示してやれば良いのでは?
と拍子抜けするようなアイデアが浮かび採用してみました。
ストライクゾーンも明確に判るよう表示することにしました。
これですべての仕様がうまくまわり始め、
トントン拍子に投打システムが決まっていきました。
ピッチャーは投げる前に握り(球種)を決め、
キャチャーがミットで示すコースへと投げ込む。
バッターは打つコースをイメージするカーソルを操作し、タイミングよく振る。
(この時はまだミートカーソルという名称ではなくヒッティングスコープと呼んでいました)

で、バットの芯に当たれば強く打球が飛び、上に当たればフライに下に当たればゴロになる、
という打撃結果に納得のできるシステムが完成しました。

変化の鋭い野茂のフォークも表現できるようになりました。
さらに守備は、野手みんなが同じように動くのではなく実際の野球のように
フォーメーションに従ってそれぞれが別に動くようにしようと考えました。
(これがパワプロの守備システムの原型となる)
基本ゲームシステム以外のところでは、「激ペナ」からの流れであるリアルな応援曲を
もちろん採用し、ビジュアルも球場の観客席にいるような視点を基本にしました。
とくに、外野席で観戦している感じを出すことを目指しました。
これが別の問題を生むことにもなったのですが、それは後ほど取り上げます。

それからある時、チームでオープン戦を観戦に行った時、
ウグイス嬢が選手をコールするのを何げに聞いていました。

?番、センター、??、背番号??

短い単語の組み合わせ、種類もさほど多くない・・・。
これはX68でも再現できるのでは・・・?
会社に帰ってから早速サウンド担当者に相談し、
のちのパワプロへと受け継がれることになるウグイスコールが実現することになったのです。
(音声はチーム内の女性スタッフにお願いすることに)

後日、調子にのって
ウグイスが出来たのならもしかしたら実況も出来ますかねぇ?」と
冗談半分に相談してみましたが、この時は笑われて終わりでした。
(私もできるとは思ってませんでしたが)
数年後、パワプロで実現できることになったのはご存じの通りです。

こうして様々な試みを取り入れ、出来るだけプロ野球のドロ臭さを表現するべく
制作は進行し、紆余曲折を経て完成に至りました。
で、先ほど出てきた別の問題というのは、外野席で観戦している感じを出す事には
ある程度成功したと思うのですが、プレイし易さ、操作し易さが
犠牲になった面もあったのです。
新しい視点にこだわったが為に発生した問題でした。

さて、プロ野球の雰囲気にこだわった「生中継68」は1991年の夏に発売されました。
心配だったこの新投打システムも好評で確かな手応えを感じたのですが、
その後しばらくは野球ゲーム制作から遠のくことになり野球のことは忘却の彼方へ・・・。
開発体制もパソコン用ゲーム制作からゲーム専用機のゲーム制作へと
徐々に移ってゆくのでした。

つづく


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