日本のミニカー界に「玩具菓子」という形で衝撃的なデビューを果たした『絶版名車コレクション』。 ダイキャスト製のボディに精密なディティールパーツ。サスペンション機構を有し、車輪はゴムタイヤを履いているうえに、各車には当時のオリジナルホイールが充てられている。そしてこの価格・・・。これはもはや「お菓子のオマケ」を凌駕した存在だ。 他の玩具菓子の追随を許さないこのハイクオリティ商品誕生の軌跡をひも解くには、制作担当である杉元浩之(すぎもと・ひろゆき)ディレクターのこだわりを抜きには語れない。
再販が決まったVol.1と、更なるリアルさを追求したVol.2。8月に予定されている両方の発売を前に、杉元Dから『絶版名車』への想いを聞いてみた。
(取材日:2004年6月3日)
「絶版名車」 と杉元浩之ディレクター。もちろん彼が車好きなのは言うまでもない。
1. 「絶版名車」に求めたもの
「SFムービーセレクション」などが堅調になりはじめた頃、コナミ玩具菓子でPVCフィギュア以外の商品路線を作ろうという構想が出てきました。それが「絶版名車」のはじまりです。当初は工場選定などの問題が山積みで、結局、企画立案から発売まで1年半を費やすことになってしまいました。 単発の商品ではなくシリーズとして続けていく必要性を強く感じてましたので、車種の選定やシリーズへの割り振りに時間を使いましたね。
1960年代、70年代は、日本の自動車史において
試行錯誤の時代であった。
どうして60年代や70年代のラインナップなのか?とよく質問されます。80年代でも良かったんじゃない?とか(笑)。 当時の国産車は各メーカーが様々な新車を出す試行錯誤の時代でした。そのため各車が個性的なスタイルを持ち、今のようにどの車も似たり寄ったりの“お決まりの”デザインなどはありませんでした。シリーズ化された人気車種もあれば、時代に淘汰され消えていった車種もあったのです。今の近代国産車の始祖となったこの時代の名車達こそ、コレクションアイテムとするに相応しいと考えたのです。
さて制作当初は、ライバルの他社ミニカーをどれだけ差別化した商品が作れるか?がキーになっていました。ご存知のとおりミニカーはすでに多くの魅力的な車種が発売されていて、製造販売メーカーも沢山あります。そんな“ネタ切れ”のような業界にコナミが今頃になって参入するわけですから、これまでの常識をひっくり返すような仕掛けが必要だったのです。
ミニカーは足元が命!ホイールは各車の個性ともいえる。
僕はいつも「ミニカーは足元で決まる」と思っています。たとえ精巧にできたモデルでも、タイヤ周りが手抜きだと台無しです。 そこでまず各車ホイールは、販売当時のオリジナルデザインのものを付けようと決めていました。このサイズのミニカーは一般的に車輪がみんな同じというのが定石になってますが、ホイールは各車の個性を形成する重要な要素なので妥協しません。 次に黒タイヤですが、これはちゃんとゴムを履かせています。見た目のリアルさや、持って路面を転がす時の接地感が違うんですよ ・・・ほぅら(コロコロ)。
この2台を見比べてください。奥がハコスカ(注:当時の箱型スカイラインの愛称)で手前がキャロルですが、こうすると大きさの違いがわかります。これは 1/64 スケールを精密に再現したからなんです。一般の他社ミニカーは、同じスケールでも小型車は大きめ&大型車は小さく作って各車でボリュームを合わせてるので、こういった比較はできません。厳密にスケールどおり作ってこそ真のミニカー! そんなところも「絶版名車」は妥協しません。
各車を比較してその大小を感じることも、ミニカーを楽しむ醍醐味のひとつだ。
2. さらなる進化を遂げたVol..2
Vol.1とVol.2 ですら色々と違うところがあります。そこらへんも紹介しておきますね。
何度も言うようですが、僕は「ミニカーは足元で決まる」と思うのです(名言ですね)。ここで難しいのは、車体とタイヤの位置関係です。写真を見てください。Vol.1の車は地面を転がす際に引っかからないようにと走行性を重視して車体とタイヤ間の距離をあけたので、ディスプレイ状態ではタイヤが少し垂れ下がってしまいます。これは意見の分かれるところ?かもしれません。お客さん側の声もあり、Vol.2では僕なりに色々と考えて、ディスプレイ重視に変更しました。その結果、カウル下にタイヤが入り込んでモデルが引き締まって見えるようになりました。
走行性を優先したVol.1(上)と、ディスプレイ重視のVol.2(下)
そして極めつけは、窓枠モールド! Vol.1の全車は窓ガラスを車体内側から普通にハメ込んでるだけでしたが、Vol.2では窓ガラス自体に凸モールドがついてる車種があります。写真のヨタハチ(注:当時のトヨタ800の愛称)がそうなのですが、このガラス側モールドで窓枠を表現することで、車体フレームとガラスの間に枠があるかのように自然に見えるわけです。ダイキャスト側にモールドを入れても、こうは見えません!
窓枠にモールドを入れてリアルさを更に演出!
3. オーバーワーク? できるできる!
この「絶版名車」の製造でどれほどの工程数をかけているのか?を知るには、各車のフロントまわりを注目すれば見えてきます。 ここでVol.2のベレGのフロントを分解してみます。(しばらくカチャカチャ)・・・はい。どうです? ライト用のクリアパーツ、吸気グリルのメッキパーツ、そしてバンパー。わずか数センチのフロント部分だけで3パーツを用意してます。しかも四つ玉ライトがキレイに映えるように、奥には銀色を塗っています。細かいところまで凝ってるのです。
「ちょっと分解してみせますね。」杉元Dは自らドライバーを手に分解をはじめた。
幾多にもパーツが重ねられ、
幾重にも色が塗られていくのだ。
塗装は色々とやってます。このベレGのフロントを例に話しますと、メッキされた吸気グリルに黒色を塗り、乾燥前に凸表面だけ綿棒等を使ってふき取りメッキ地を出してます。すると奥まった部分にだけ黒が残り影が落ちたよう見えるので、リアルさがぐっと増すのです。
もちろん現地の工場とは何度も衝突しました。 だって、ここまですると明らかにオーバーワークですし。「そこまでして意味があるのか?」とか「そんなの無理だ。」とかブツブツ言われ続けてましたが、「できるできる!」といつも強行してきました(笑)。 妥協せず今までやってきたからこそ、今の「絶版名車」があるのだと僕は思います。
4. これからの「絶版名車」
台底面に立上げがあるのは、当時、上フタに
クリアケースが採用される予定だった名残らしい。
もちろん、これからも「絶版名車」シリーズは続きますよ! どこまで実現できるかは解りませんが、60年代〜70年代にかけて活躍した国産車はまだまだありますからね。車種ラインナップ、グレードとも期待していたください。
将来的にはこの「絶版名車」シリーズで培ったノウハウを活かし、新しい何かのシリーズ商品を生み出せたらと思っています。 夢のような話ではなく、そう遠くない近い将来の話にしたいですね!
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お話:杉元浩之ディレクター
聞き手、写真と文:佐々木信幸
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